US進学総合研究所

短大の募集停止まとめ&短大から大学の学部への転換はどのように進んでいるのか?


2024年9月11日(水)US進学総研

 2025年度からの短大募集停止は23校。2026年度からの募集停止も発表が続いており、学科単位での募集停止も多く出ている。2024年9月3日には、國學院大學栃木短期大学が2026年度からの募集停止を発表しました。現時点での募集停止を発表している短大を整理してみると下表のようになります。大学3年次編入を売りにしている「知名度のある大学の併設短大や系列・系属短大」も、編入だけでは入学を決める理由にならない時代に入っていることが分かります。併設大学の学部への積極的な転換となった短大もあるため、全部がなくなったわけではありませんが、短大のままでの学生募集は厳しい状況であることは間違いありません。

短大定員充足率は、全体で見れば引き続き厳しい状況だが、毎年定員充足している短大もあり

 私立学校振興・共済事業団の「私立大学・短期大学等入学志願動向」における、2023年4月入学者の集計では、254校中で定員充足しているのは22校のみとなっており、92.0%が定員割れというのが現実です。2024年4月入学者のデータは、9月11日時点では、まだ発表されていません。各短大のホームページで発表されているデータを集計すると、入学定員を減らすことで充足率としては改善している傾向もありますが、入学者の絶対数は減少しているのは確実となっています。このような状況の中で、毎年定員充足している短大もあります。下表の中では、東京都の戸板女子短期大学、福岡県の中村学園大学短期大学部と、大分県の大分県立芸術文化短期大学。公立短大でも、すべてが定員充足しているわけではないことを考えると、素晴らしいことだと思います。
※戸板女子短期大学については、大学ジャーナルオンラインで、集まる理由についてコラムで取り上げています。

大学学部への改組の方向性について

 2026年度より募集停止を発表している短大のうち3校は、併設の大学学部への転換を計画しています。創価女子短期大学の国際ビジネス学科は、創価大学の既存学部である経済学部と経営学部の学びを融合、発展的に再編し2026年4月「経済経営学部ビジネス学科」とする構想。南九州大学短期大学部の国際教養学科は、南九州大学の既存学部である健康栄養学部の中に、「地域・医療・食品・健康・データサイエンスなどに関する学科」を2027年4月に新設する構想。共愛学園前橋国際大学短期大学部の生活学科は、共愛学園前橋国際大学に2026年4月「国際社会学部 地域児童教育専攻」「デジタル・グリーン学部 デジタル・グリーン学科」を新設し、発展的に引き継がれていく構想。併設大学がある短大は、このように学部として生まれ変わる計画が進んでいます。学部再編等に必要な経費を定率補助・20億円程度まで支援してもらえる「大学・高専機能強化支援(支援1)」は、2032年度まで支援申請を受け付けていますので、この支援制度を使って、既存学部とあわせて改組により、文理融合の「環境」「情報」に関する学部学科が多くなるものと考えられます。

募集停止した学科を、別法人が支援する例も

 福岡女子短期大学(学校法人九州学園)は、2025年度より音楽学科のみ募集停止すると発表。その直後に、学校法人九州学園の経営再建に乗り出した国際医療福祉大学・高邦会グループが、短大の施設を使って新たな音楽大学を設置する構想を進めることになりました。早ければ、2026年4月に「福岡国際音楽大学(仮称)」として新設される構想となっています。このように、別法人が短大を支援して、大学として生まれ変わる例は、あまり聞いたことがありませんが、学部系統として今後大きな変化が期待される「音楽系学部」ということもあり、注目度は高くなっています。

長期履修制度の活用で、社会人や高卒就職希望者を取り込めるか

 短大における長期履修制度は、修業期間を3年間または4年間に延長して、2年間分の学費で、計画的に学ぶことができる制度。これにより、働きながら学ぶことができるようになり、社会人や、高卒で就職しようと考えていた生徒も短大で学べる可能性が出てきます。制度としては前からありますが、ここ数年で、この制度を活用して、3年コースなどを併設する学科も増えています。制度自体が、あまり認知されていないため、学びたい(資格がとりたい)と思っているのに、社会人として働いている方も多くいるのではないかと考えられます。認知されれば、劇的に入学者が増えるわけではありませんが、男女共学化とあわせて、有効な入学者確保のための対策だと思います。

まとめ

 高大接続改革以降、大学に入学しやすくなったことで「大学編入」の魅力が薄れ、学科再編可能な分野には限界があり、短大は厳しい状況が続いていきます。今後の対策は、学生募集方法の改善はもとより、男女共学化、長期履修制度の活用、通信制課程の併置、通信制高校との5年高短連携など、さまざまな対策がありますが、学科の特性にあわせてミックスさせて実行していくしかないのではないかと思います。今後も、受験生の動向を見ながら、どのような学生募集方法があるかを考えていきたいと思います。

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