US進学総合研究所

大学・高専機能強化支援事業(支援2)初回公募選定結果について考えてみる


2023年8月3日(木) US進学総研

 先日「大学・高専機能強化支援事業 支援1」の初回公募選定結果について分析したコラムをアップしたところ、「支援2」についての質問も多くいただきましたので、こちらも追加で考察してみました。「支援2」は、国公私立大学(原則として大学院段階の取組必須)と高専を対象に高度情報専門人材の確保に向けた機能強化を目的として、「支援1」と異なり、定率ではなく定額補助となっています。

「支援2」・・・高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援

① 2023年度から2025年度までの3年間で申請することができる
② 既設の情報系分野に係る研究科、専攻を有し、大学院における研究科、専攻、コース等の設置・増員、又は、専攻に係る課程の変更による体制強化を図る取組を対象とするのが基本
③ 大学の学部・研究科の定員増等に伴う体制強化に対して定額補助で最大10億円(一般枠)支援
④ 海外のトップ大学と連携するなど、規模や質の観点から極めて高い効果が見込まれると評価される計画を有する大学はプラス最大10億円(ハイレベル枠)支援
⑤ 既設の情報系分野に係る研究科、専攻、コース等を持たないが、情報系分野に係る学部・学科を有する大学が、助成期間中に研究科の設置を行う取組についても、一定数の大学に限り対象とし、最大4億円支援(特例枠)
⑥ 採択計画は全体で約60件(ハイレベル枠5件程度、特例枠数件程度を含む件数)の支援
⑦ 支援は最長10年
⑧ 審査の観点は、学生数拡充、学生確保の見通し、企業・自治体等との連携、初等中等教育段階との連携、女子学生確保等
⑨ 国際卓越研究大学として支援を受けている大学は対象外

上記のような条件で申請をしているかと思います。初回57件申請があり、51件が採択されています。高専が5校入っているため、これを除くと、52大学申請で46大学が採択されたということになります。

■「大学・高専機能強化支援事業」の初回公募選定結果について(報道発表資料)(令和5年7月21日)

採択計画全体で60件の中、51件が採択。国立は全37大学が採択。公立と私立では、採択されなかった大学も

 「支援2」は計画していた60件に近い51件が採択され、残り枠が少なくなりました。2025年度までの申請になっていますが、来年度には終了しそうな勢いです。「支援1」は、申請したすべての大学が採択されましたが、「支援2」については、国立全37大学が採択されたものの、公立と私立についてはすべてが採択される結果とはなりませんでした。注目度が高かった「ハイレベル枠」は14件申請があり、7件が選ばれました。残りの7件は選定されていませんが、一般枠に振替えて採択された大学がいくつかあった様子です。「ハイレベル枠」は、計画では5件程度となっていましたが、初年度で7件採択されてしまいました。定額補助となっていますが、内容により金額の大小がかなりあると思いますので、採択件数だけで残りがないとは言えませんが、想定よりも多かったことは事実です。また、国際卓越研究大学として支援を受けている大学は対象外となりますが、東京大学は採択されています。

「支援2」に伴い、国立大学の定員増あり。情報系学部学科で365名増予定

 国立大学の定員増は、「魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増」以外は認められていませんが、今回は「支援2」について、学部の入学定員増も認められているようです。採択された大学と、学部の入学定員増を予定している学部学科を一覧にすると以下のようになります。入学定員増は申請段階で、8月末に認可される見通し。情報系学部学科のみ365名増えています。国立大学の収容定員の増員を伴う学部定員の増員を行う場合は、国立大学法人の第5期中期目標期間(2028~2033)終了時までに他学部・他学科を中心に同規模の定員減を行う計画であることが条件になっていますが、2033年度までだとすると、一時的とはいえ、長期間に渡り情報系学部学科の定員が増えることになります。直近で考えると、中堅以下の私立大学で、学生募集上の影響が出てくるものと考えられます。

47都道府県中、15府県は「支援2」で採択された大学なし

 青森、岩手、山形、新潟、埼玉、岐阜、京都、和歌山、鳥取、島根、香川、徳島、高知、鹿児島、沖縄の15府県においては、「支援2」で採択された大学がないという結果になりました。京都大学は、国際卓越研究大学として支援を受けている大学は申請できないことになっているため、申請しなかったと考えられます。名古屋大学がないのも同じ理由かもしれません。大学院進学率から考えると、埼玉大学・長岡技術科学大学・岐阜大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学・京都工芸繊維大学・九州工業大学が採択されていないのは少し違和感があります。また、私立大学の中では理工系大学院進学率が高い、早稲田大学・慶應義塾大学・東京理科大学なども採択されていませんでした。

「支援1・2」の両方採択されたのは7大学。「支援1」学部再編かつ「支援2」一般枠での採択は、横浜市立大学・山陽小野田市立山口東京理科大学・東京都市大学の3大学

 「支援1」では学部再編と定員増の2タイプがあり、「支援2」ではハイレベル枠・一般枠・特例枠の3タイプがあります。「支援1・2」の両方に採択された大学は7大学(公立3大学、私立4大学)。このうち学部再編と一般枠でそれぞれ採択されたのは、公立では横浜市立大学と山陽小野田市立山口東京理科大学の2大学、私立では東京都市大学のみとなりました。

2024年度より大学院段階の「授業料後払い」制度がスタートする。情報系の高度専門職人材を増やせるか

 2024年度より大学院段階の「授業料後払い」制度もスタートします。学生の年収300万以下で、修学支援新制度の対象者であって2024年度に修士段階へ進学する者及び、2024年秋入学者を対象として開始するとのこと。「支援2」で採択された大学は、ほとんどが国立大学でしたが、大学院の定員が増え、「授業料後払い」制度も出来てくると、私立も含めて大学院への進学はしやすくなると考えられます。情報系の就職は、極端な売り手市場になっているようです。情報系の高度専門職人材は全く足りていないので、大学院進学を増やして、成長分野産業を盛り上げてもらいたいと思います。

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