US進学総合研究所

高等学校の授業料無償化について考えてみる~大阪府&奈良県の例~


2023年10月19日(木) US進学総研

 岸田首相が2023年1月に表明した「異次元の少子化対策」として、教育に関する費用の無償化の話が多く出てきています。国が行っている施策に加えて、都道府県もさまざまな支援を打ち出しており、その中でもインパクトが大きかったのは、2023年8月25日に大阪府から正式に発表された、所得制限なしでの高等学校の授業料無償化です。

大阪府は63万円を上限にして所得制限なしで高等学校の授業料無償化

 大阪府は、国の支援に加えて、もともと他県よりも大きな支援も行っていましたが、所得制限もあり全員が対象にはなっていませんでした。これを全国では初めてとなる所得制限を撤廃し、府民全員対象とすると発表しました。支援する授業料は60万円から63万円に上げられ、授業料63万円を超える部分は、保護者負担ではなく高校が負担。大阪府から他府県の高校に通う生徒も対象となる。2024年度は、高校3年生徒への支援からスタートし、2026年度から全学年への支援を実施する。大阪府の負担額は、全学年への支援となる2026年度(令和8年度)で、383億円+αと発表しています。全員対象にすると金額もかなり大きいことが分かります。
 この負担を少しでも軽くする目的もあると思いますが、2024年度から「母校応援ふるさと納税」を創設することも発表しています。教育機関に対する「ふるさと納税」はかなり前からあるのですが、返礼品の問題などもあり大きな金額が集まっている例は少ないです。大阪府は、新しい集め方を考えているのかもしれませんので、注目されます。

(参考)令和5年度 都道府県別 私立高校生(全日制)への修学支援事業

奈良県も大阪府に追随。所得制限はあるものの、63万円を上限にして高等学校の授業料無償化

 大阪府民だけが優遇されるのか?と思っていた人も多い中、2023年10月18日、奈良県が高等学校授業料の無償化に向けた案として、世帯年収を910万円未満とする制限を設けるものの、大阪府と同じ最大63万円の授業料を支援すると発表しました。授業料63万円を超えた部分は、大阪府と異なり保護者が負担するとのこと。対象者は、県内在住で県内の私立高校に通う1~3年生で、県外の高校に通う場合は対象から外れる。大阪府は、大阪府在住者は全員対象になるため、この点は異なる。所得制限はあるものの、世帯年収が910万円以上であっても、23歳未満の子どもを3人以上扶養している場合は、生徒1人あたり年間5万9400円を上限に県が独自で支援するとのこと。
 奈良県は、2023年7月まで「奈良県立工科大学」の設置構想がありましたが、この計画は中止が発表されています。限られた予算の中で、大学新設による県内残留・県内産業の競争力強化ではなく、子育て支援・教育にかけるという判断をしたということだと考えられます。

授業料と教育充実費などのその他費用の割合が、都道府県により違いすぎる

 今後も、関西地区を中心として高等学校授業料無償化の話が大きく取上げられることが多くなってくると予測されますが、この支援の話は、授業料の支援であり、そのほかの費用ついては、保護者が負担することを認識しておかなくてはいけません。私立の高等学校の場合は、教育充実費や施設設備費など授業料以外の費用も大きな割合になっています。大阪府や奈良県は、授業料63万円を上限としていますが、これは他と比較するとかなり高額なのですが、逆に授業料以外の費用が安くなっていたり、設定がなかったりしています。地域により考え方が大きくことなっていますので、授業料支援の上限設定も難しい問題となっています。

公立大学の授業料無償化の話も進んでいる?

 大阪府は、高等学校の授業料だけでなく、大阪公立大学の授業料を府民対象に所得制限なしで無料にすると発表しています。兵庫県も大阪府に追随して、兵庫県の県立大学2校の授業料を県民対象に所得制限なしで無料にすると発表。この件については、大学ジャーナルオンラインでコラムを公開しています。

公立と私立、学費が変わらないのであれば、教育の良さで進学先を選択できるようになる

 公立高校と私立高校が学費関係なしで選択することができるようになれば、教育や進路指導など支援が厚い私立大学を選ぶ生徒が増えることが予測されます。そうなると公立高校も生徒を集められるように変化していくことが考えられ、全体が高いレベルで均一化されることも予測されています。

 大学も同じだと思います。特に私立大学の理系学部については、国公立との学費の差がありすぎるため、選択の候補にならないという現実問題もあります。これを解消するために、2024度からは年収600万円までと所得制限がありますが、修学支援新制度で私立理工農系学部の支援が追加されます。国公立の学費と一緒にはなりませんが、私立文系並みにはなるように設定してくれています。しかし、2025年度以降は、理工農系学部の新設や定員増に文部科学省が支援金を出す関係もあり、私立大学で理工農系学部学科がかなり増えていくことになります。本来ならば所得制限なども撤廃していきたいところですが、理工農系学部学科が増えるだけでも、奨学金はどんどん増えていくことになり、とても難しい問題です。

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